本日は私の得意なF.P(ファイナンシャルプランナー)としての経験と知識をもとに
『財産の引継ぎ(相続問題)』について例をご紹介させて頂きます。
今回の例は、『不動産が財産の8割以上を占めるご家族』についてご紹介させて頂きます。
(個人の特定は出来ないようにご紹介致します)
まず、今回の例の基礎となる家族図と財産の概略図は以下の通りです。
今回の内容は子供Aと子供Bから、
『父が高齢の為、不動産を誰がどのように継げばよいか意見を聞きたい』との事です。
子供Aの要望は、
『家族が揉めないように、一旦は母に全て相続してもらうことがベストではないか』
子供Bの要望は、
『全部母名義にしてしまうと、母が亡くなった時に多額の相続税を支払う事になるから私達子供2人に多めに相続したらいいのではないか』
ここで、お二人の相談内容を整理する上で今現在の状況も教えて頂きます。
まず、実家には現在子供Bが同居しており、今後もこの実家に住み続けたいという願望があります。
子供Aは、『均等に相続するのは難しいから、一旦母名義の財産としてからゆくゆく話し合えばいいと思う』という先送り的な願望があります。
また、現在の父母は病院や福祉施設に頼らざるしかない生活環境となっておりました。
この現状を把握した際に見えてくる事がありますよね。
まず、第一に子供Bが安心して遺産相続(財産の引継ぎ)による手続き(実印を押す行為)を進めるには、ご実家の土地建物を子供Bが引き継ぐ事で家族円満となる可能性が高いという事です。
第二に、母はご高齢で施設に入所する可能性も高く、また現実的に医療費の負担が多い可能性が高い為、安心して老後を過ごして頂く為には『現金』が必要であると予測出来ますよね。
とはいえ、子供Aをないがしろにしますと遺産相続の際に『私は納得いっていないから実印を押さないよ』と言う可能性もありますので、ここも注意が必要なポイントとなります。
ここで少し補足のご説明のために遺産相続についてご説明の内容を記載させて頂きます。
※遺産を誰がどのくらい相続するかを決める行為を『遺産分割協議』と呼びます
遺産分割協議とは誰がどのような割合で遺産を引き継ぐのか、遺産の分け方について遺言(遺言書等)による指定がある場合には、これにしたがって分けること傾向です。遺言書がない場合には民法に相続分の割合が規定されています。
※今回の例で言いますと、母が財産の半分、子供Aと子供Bが残り半分を分け合う割合です
※遺留分(憲法で守られている、絶対的取り分)は通常の相続割合のさらに半分となります。
相続人全員で合意すれば、遺言書の内容や法定相続分とは異なる割合で遺産を分けることができます。
このように、相続人全員で遺産の分け方についての話合いをすることを、「遺産分割協議」といいます。
※遺産分割協議は相続人全員が合意しなければ無効です。
※行方不明の相続人を自己判断で除外したり、隠し子を含めずに行った遺産分割協議は無効となります。
この補足説明であるように、家族がなるべく仲良く話合いを行い、協議をまとめなければいけません。
よって、それぞれの相続人(今回では母・子供A・子供B)の要望や願望を理由なく無視してもいい事はありません。
余談ですが注意点があります。なぜか多くの相談者は『年齢が高い人(高齢)や男の人』が先に亡くなると仮定して相談される傾向になります。
もちろん、皆が寿命を全う出来ればよい事だとは思いますが、稀に『順番通りにはいかない』のも現実であることを知っておいて頂きたいです。
危機意識が高いご家族では、『うちは私も妻もそれぞれ遺言書を作成している』という方もおります。
昔、保険会社の営業さんより営業トークで『〇〇さん、ご自身がいつ死ぬか予測できますか?』と聞かれたことがあります。もちろん、生命保険に加入させようとする営業トークなのは分かっていますが、それでもこの言葉は『その通り。自分がいつ死ぬかなんて誰にも分からない』と素直に思いました。
意外とそういう点で私は素直なのか、私は40代ですが既に遺言書を2回作成(自筆遺言書)しております。なるべく家族円満が嬉しいですよね。
『うちは財産と呼べる物は家と車ぐらいしかないから関係ない』と思う人もいるかもしれませんが、
家が一つ(財産評価でいうと5,000万円未満)という家庭の相続争いが毎年家庭裁判所で行われているのを知っていますか?
家が一つで相続人が2人、3人以上といるケースでは『この家は俺が(私が)継ぐべきだ』と言う具合に揉めに揉めるケースも後を絶ちません。
ちなみに、遺産分割協議が整わなかった場合の補足説明もしておきますと、
遺産分割の話合いがまとまらない場合には、
最終的には、家庭裁判所での調停や審判の手続きによることになります
遺産分割調停というのは、家庭裁判所での遺産分割の話合いです。
調停委員が各相続人の間に入って意見を聞いたり、家事審判官(裁判官)から具体的な解決策が提案されたりしながら、話合いが進められます。
調停が不成立となった場合には、審判手続きに移行し裁判所が分割方法を決定することになります。
また、遺産分割協議はいつまでにやらなければいけないというような期限はありません。
しかし、相続税に関しては協議が確定していなければ受けることのできない軽減措置があり、
申告期限内(相続開始後10ヶ月内)に協議が整わないと、相続税の軽減措置が受けられなくなる場合があります。
※配偶者が相続人となる場合には、配偶者控除という控除が受けられます。相続税の申告期限までに遺産分割が終わっておらず、配偶者に分割されていない財産については配偶者控除を受けることができません。
※相続税がかからない場合には、相続税の申告期限までに協議を終わらせる必要はありませんが、協議の終わらない財産に掛かる経費(固定資産税や修繕等)については一旦は全ての相続人の負担となります。
では、今回の財産引継ぎの例にお話を戻します。
仮に父が先にお亡くなりになると仮定した相談内容でした。
母には現金が入る仕組みを、子供Bには実家を、子供Aには相当の納得がいく成果を準備した案が相談者の求める本質なのかなと私は判断しました。
よって、私の案は下記内容となりました。
1,実家は同居している子供Bに相続頂くのがベスト
2,収入が入ってくる駐車場とマンションA,マンションBの建物は母に相続
3,マンションAとマンションBの土地は子供Aが単独か、もしくは子供Bと分筆して分けるのがベスト
さてさて、解説がいくつか必要な案に思える内容ですよね。
ます、1,のご実家については私の案通りご実家の土地建物は子供Bに相続してもらえば子供Bの要望は一つクリア致します。
2,の母に駐車場(土地)とマンションの建物のみの相続についてのご説明ですが、駐車場とマンションからは毎月100万円以上も収益がありました。駐車場は土地を相続すればそのまま収益を得られますが、マンションの賃料収入は『建物の名義人』に入ってくるため建物名義のみを母に相続されるのがベストかと思います。父の現金や株式などがありましたら、それらも母に相続してもらうのが良いかと思います。
最後に、子供Aは問題の解決を今考えるのが面倒な為、問題の先送り(一旦、母に全て相続する)という感じを受けましたが、ここは少し折れて頂いて『マンションの土地名義』を相続すれば、それなりの価値ある土地ですのでご理解頂きやすいのかなと思いました。
マンションA,マンションBの両方のお土地を相続できれば尚いいのでしょうが、土地の評価だけで3億円もの価値がある土地ですので、子供Bに新たな不満を生む可能性もあります。
よって、私はマンションAの土地は子供Aが相続し、マンションBの土地は子供Bが相続する形式がベストではないかなと思います。
将来、母名義の駐車場については子供Aが相続するのもよし、子供Bが新たに欲してきた場合にはそれぞれが話合いをすればよいかと思います。
話合いがこじれるようでしたら、駐車場は売却してお金を二人で分け合えばよいかと思います。
色々な相続にまつわるご相談を受けてきましたが、
いつも思うのは『家族の仲がいいご家庭が最強で最高』という事です。