『カランコロン』二話完結(始)

サラリーマンになって、もう20年も経つ。

関東に関西に九州と各地を転々と転勤してきた。

若い頃は『情熱』と『やる気』に満ち溢れていたが、
年を重ねるごとに気づかされる現実。

『正しさ、真面目さ』なんてのは、ほとんど通用しない現実を経験し、
どこか『冷めた』感じに生活をするようになってきた。

そんなサラリーマンAは、転勤により20年ぶりに地元に帰ってきた。

20年も地元を離れており、地元の同窓会にも一度も顔を出したこともないため、友達はいない。

どことなく懐かしく、ただ、どことなく寂しさも感じる。

そんなサラリーマンAには、ひとつの楽しみがある。

たまたま見つけた『スナック』のお店で飲むことだ。

このスナックは、いままで経験してきた『夜のお店』とは違って、
変な色恋や煩わしい駆け引きもなければ、そもそもお客に深く聞いたり関わってきたりしない。

お店には、ママの『ともみ』とベテランホステスの『ナナ子』、
そしていつもボーッとしている『ミサ』の三人がいる。

ママのともみは、愛嬌もよく、おしとやか。
ただ、余計に人に話しかけたりはしない。
ベテランの『ナナ子』は、仕事を早く終えて、同棲している彼氏に早く会いたいとばかり口にする素直な女性。
『ミサ』に至っては、いつも食べ物の話しかしない。
『⚫️⚫️のケーキが食べたい』とか『⚫️⚫️のベーグルが食べたい』等、
とにかく食べ物以外の話を聞いた事がない。

テレビもカラオケもない。
5~6人もお客さんが来れば、この狭いお店ではすぐに満席になる。

ちなみにお客が満席になっている事はほとんどない。
平日なんてサラリーマンAしか来ない事も多い。

サラリーマンAは、こんな『ガツガツ』していない、
のほほんとしているこの店が妙に気にいっている。

特に深い話もしないし、聞いてもこない。
夜遊びが好きな人から言わせると、物足りないお店かもしれない。
でも、Aにとっては、この距離感がとても落ち着く空間だ。

サラリーマンAもさほど三人の事は気にならない。
ただ、地元の友達もいないサラリーマンAにとって、適度に寂しさを埋められて、何も考えなくていい時間を過ごせる『居心地』のいい空間だ。

いつものようにサラリーマンAは仕事を終えて、
軽く牛丼屋でササッと食事を済まし、いつものスナックに入った。

今日は、いつもと少しだけお店の空気感が違うのに気づいたが、
サラリーマンAは特に気にせず、いつも通りキープをしている芋焼酎を飲む。

いつも無言の時間はあるが、今日はさすがに無言の時間が長い。
さすがにサラリーマンAも問いかけてみた。

(サラリーマンA)
何かトラブルでもありました?

(ママのともみ)
トラブルなんて、こんな呑気な店では起こり得ないですよ。
最近お店が暇すぎて、さすがに今後どうしようかな~って。

特に暗い感じはなく、普通にお店を閉めようかという感じの話だった。
ママのともみは旦那がいる。
お店を閉めたからといっても生活は出来るのだろう。
ナナ子は、昔のバイト先でママと知り合い、その流れでお店にいる。
彼氏とうまくいっていて、ナナ子も特に悩んでいる様子はない。
ミサに至っては、相変わらず『食べ物』しか興味がない。
おそらくミサは、スイーツのお店か美味しい飲食店に勤めたほうが幸せだろう。

(サラリーマンA)
そんなに深刻じゃない割には、なんていうか、、
お店の空気が重い気がして。

(ママのともみ)
うちのお店は流行ってなくても、この二人にちゃんとお給料を払えたら充分なんだけど、だんだんそれもキツくなってきて。

聞けば、この数ヶ月、ママのともみは利益が全く出ていなかったらしい。
ママは真面目で人柄もよく、ナナ子とミサにはきちんとお給料を支払っている。ママ自身は、生活は旦那がいるので大丈夫だと言う。

(サラリーマンA)
俺はこのお店が好きだけど、ママに利益が出てないんじゃ大変だね。
俺なんかが口を出すことじゃないけど、お店は閉めてもいいんじゃない?
特に誰かが困る事もなさそうだしね。

サラリーマンAが話終えると、
ママのともみはお店の奥にある小さな更衣室に入っていった。

(サラリーマンAの心)
『しまった。余計な事に口出してしまった。ママも怒ってしまったのかな。』

数分もすると、ママのともみが戻ってきた。

いつもはカウンター越しでしか接客しない女性陣たち。
ママのともみは、珍しくサラリーマンAの横に座った。

(ママのともみ)
お店を閉めるかどうか迷っているのは、この手紙が一番の理由なんです。

ママのともみは、1枚の紙を出してきた。

手紙だ。

ママは、その手紙をサラリーマンAに手渡し見せた。

続く

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