空家(実家)を貸すか、売るか

先日、『旧実家を貸すのがいいのか、売るのがいいのか』というご相談をお客様から実際にお受けしました。
本ページを訪れてくださる方々にも、この件について実際に悩んでおられる方は多いのではないかと思います。

結論から申し上げると、

貸出す場合と売る場合を総合的に比較した場合に、お客様自身が納得できる方を選ぶ方がいい

ということになります。

これは一体、どういうことでしょうか?

元は実家だった空家となると、

【子どもの頃の家族との思い出が詰まった家だから】だとか、【もしもの時のために実家は残しておきたいけれど、維持費がもったいないから貸し出したい】という『なるべく売りたくない』というパターンと、

【維持費がもったいない】だとか、【なんとなく賃貸は煩わしそうで嫌】だったり、【今後使用する予定は無いから】あるいは、【賃貸より一気に売却でお金にする方がよさそう】という『どちらかというと賃貸より売却』というパターン、

お客様の思考はこの2パターンに分かれます。

最近多いと感じるのは、この2パターンのちょうど真ん中で悩んでいるお客様です。

具体的に、『賃貸と売却の比較』のシミュレーションを作成してどちらがいいのか考えていきます。

~今回ご相談頂いた不動産について~

❖土地(50坪)と建物(空家:30坪)※間取り4LDKの2階建

(物件の詳細内容)
・場所:九州の地方郡部
・土地:坪15万~22万程
・建物:築24年
・駐車場:普通車1台と軽1台駐車可
・見た目:比較的綺麗
・内装:約40万程のプチリフォームで貸出し可能(キッチン・トイレは既に新品に交換済)
 ※実際にキッチン・トイレまで含めると約80万程の費用がかかる計算
・賃地にする場合・・・ペット不可で月8.5万円、ペット可で月9万円程
・売却する場合・・・・土地建物合計で1,600万~1,800万程で売却可能

それでは、比較してみましょう。

【結論指標】※あくまでも数字のお話しとなります
❖売却は1,800万、賃貸は家賃下落も考慮して月額8万円でシミュレーション

売却価格1,800万で売れた場合には、利益は1,500万程
◎売却利益(手数料や税金等の支出後、使えるお金)

この売却利益額を『賃貸として』得るために必要な日数は、
1,500万円÷家賃8万円+18ヶ月=205.5ヶ月(約17年となります)

※18ヶ月は、5年に一度空室となった際の空室期間を6カ月とし、算出しております。
(例)1500万÷8万円=187.5ヶ月(約16年満室)
満室の可能性は低い為、家族向け賃貸の入居期間平均(住宅機構参考5.1年)を指標とし、
16年÷5年=3回空室期間があると想定 ➞3回空室×6ヶ月空室期間=18ヶ月としております
※仮に賃貸閑散期(6月末~8月)に空室となった際に、次の賃貸繁忙期(2月~4月)まで6カ月~8カ月程の間がある為

数字的結論のポイントとしては、
賃貸収益を得るために、最低でも17年間以上、賃貸リスク(下記参照)を理解しながら
大家業(賃貸投資)としてチャレンジするかどうか
、という点が大きな注目ポイントになるかと思います。
※修理費用は参考指標に算入しておりません

(再確認が必要な事項)
・普通車が2台駐車可能かどうか実際に再確認
・下水道なのか、浄化槽なのか
・建物の大規模修繕(外壁・屋根・コーキング)は早期不要かどうか
・近隣に問題視する人物等がいるかいないか
・過去の事故・懸念事項等は何もないかどうか
・所有者の火災保険及び地震保険の保証内容と期限

賃貸活用の方向性が高い場合に、改めて確認が必要な項目です。

【賃貸として活用される場合の留意点】
①入居者成約報酬として、家賃1ヵ月分の報酬額×消費税がかかります
⓶入居者には、入居者用の火災保険・家財保険を勧めます
③入居者は、信用性のある【法人】以外の場合には、保証会社の審査の実施をおススメします
④毎月の管理を依頼される場合には、
 毎月の管理料として、賃料×5%~10%が、入居者の家賃より差引かれます
(例)家賃8万円-(8万円×5%)=76,000円
   この場合、毎月入居者より徴収する家賃から4,000円が管理料として差引かれることになります(振込手数料は原則大家が負担)

注意点管理・・・入居者の応対や物件クレーム処理・家賃徴収が主な業務となります
物件の経年劣化による修理修繕が発生した場合の費用負担は原則大家となります

□賃貸のメリット
17,18年間の不動産貸付業に成功した場合には、賃料収益を1500万程得た上で、
さらに将来(17年後先)土地代金のみで売買を行い、売買利益も得られる可能性があります

(仮)坪20万×46坪=920万円の売買価格

上手く行けば『20年近く不動産収益を得られ、さらに土地代の利益も得られる
※実際には、建物の解体費を所有者が負担するケースも多い為、
利益は【売買利益 -(解体費+手数料】となるのが現実的です

■賃貸のデメリット
売買利益程を得る為には、最低でも17~18年という年月が掛かります
不動産収益を得るという事は、確定申告が必要です
 ※所得税・住民税・社会保険料の負担が増える可能性があります
固定資産税支払いに加え、建物の内外の修理費用の負担が必要になります
※10年以内の予測負担費:4LDK建物外(約150万)、建物内(約70万)
入居者が自殺・他殺等となった場合には不動産価値は急激に下がる可能性があります
(賃貸でも、売買でも事故物件は告知義務が必須です)
※『知り得た事故・瑕疵については重要事項の説明に必須』という法改正がなされています
自然災害により、建物の状態が悪く入居者が住めなくなる事がある
『建物には保険の適用による修理費』が出たとしても、
本来得られる入居者からの家賃については保証されないケースが多いです
※昔の火災保険には災害時の家賃保証がほぼ付いておりません
まして住宅用の火災保険であれば、ほぼ付いておりません
家賃収入は絶対ではない事業の為、儲からないリスクも存在します
空室期間は完全には予測できません。また、入居者の入居期間もデータ上の話であり、
一切の保障はありません

売買に関する重要事項

□売買のメリット
・一回の売買で、今後の不動産所有リスクから解放される
※固定資産税の支払い、物件の管理維持費、物件の修理費負担等
・お父様の土地の購入代金が経費(取得費)として計上できる為、
 売買にかかる税金が安価となる※土地の契約書が必要です
また、3,000万円の特別控除が受けられれば、譲渡税も無しになります(売価が3,000万未満の場合)
※3,000万円の特別控除の特例要件を参照ください⇨【3,000万円の特別控除】

 特例が許可された場合には、シミュレーション通りの売却が成約できれば、
【(18,000,000円)-手数料】が売買収益となります

■売買のデメリット

・売却後は、当然に不動産(家)がなくなります
・1回、確定申告が必要です(譲渡税の申告)
※社会保険料が上がる可能性がございます。(税務署・税理士・会計士のいずれかに確認が必須です)
・土地の境界確定図面、建物図面、土地建物権利証、の提出が必要になります
※要するに、売買契約前の準備に多少の労力を要します


『貸したらいくら?』『売ったらいくら?』という事を如何に現実的に知ることが出来るかどうかが大きなポイントです。

貸したらいくら?
賃貸で貸し出した時の家賃を知る為には、自分の物件エリアで『賃貸に強い不動産会社』に確認する事が大切です。
出来れば、1社よりも2社の見解を聞いてみるといいでしょう。
ただ、『いくらで貸せると思うか?』ではなく、『どうしてその家賃価格で貸せるのか』という理由まできちんと確認する事が大切です。

例えば、本物件(お客様の空家)の徒歩10分圏内に、実際に貸し出している戸建があるとします。
その戸建の築年数や間取りが本物件と類似しており、家賃が8.5万円の場合、
おそらく同じような価格で貸せるだろうと不動産会社も判断します。
※反対に近隣相場より価格の差異があれば、なぜなのかをご確認ください。

売ったらいくら?
近隣に、新築の4LDKが2,600~3,000万で販売されているエリアで、築24年の戸建が2,000万円で販売しても中々売れないだろうなと思うのは理解できるかと思います。
とはいえ、半額くらいならというアバウトな数字にしてしまうと、もう少し高く売れたのにと後悔する事もあります。

よって、インターネットの情報や不動産会社の意見を聞きながら、ご自身が『価格を相談して判断する』ということが大切になります。

以上、もしこれから、あるいは正に、旧実家をどうしようかとお考えの方は、
ぜひ、貸出す場合と売る場合を総合的に比較した場合に、ご自身が納得できる方を選べるように、
本記事を参考にされてご自身でシミュレーションをされてみてくださいね。

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