とある不動産や(愛の14話)

Aは久しぶりの地元に戻って来た。
どことなく懐かしく感じる。

早速、Aは『イカツイおじさん』の元へ向かい、再会する。

久しぶりに見るAの姿、顔つきで、何かトラブルが起きている事を、
イカツイおじさんは察知する。

イカツイおじさんは、昔Aと初めて出会った頃のように話をする。

(イカツイおじさん)
『腹減ってないか?一緒に食事をしよう。』

(A)
『うん。』

イカツイおじさんと初めて出会い、初めて人に食事をごちそうになった定食屋で二人は『サバ味噌定食』を食べる。
この店のサバ味噌定食は絶品だ。

食事をしながらAがゆっくりと話を始める。

Aが『宝町』で地上げ屋として成功させている事、
街の性質や町に住む人間の特徴など、地元とは違う宝町の様子を話しする。

そして、ゆっくりと『●●子と娘』について話を切り出す。
イカツイおじさんは、ただただAの話を静かに聞いている。

Aの話も終わったころ、ようやくイカツイおじさんが口を開く。

(イカツイおじさん)
『あの子が元気にしているのか。もう小学生か。
母親の●●子は美人だっただろ。懐かしいな。』

Aは、話を未来に戻す。

(A)
『狐(キツネ)というヤクザ、あの男とは決着をつけないといけない。
必ずあいつから行動に出てくる。その前に先手で乗り込むつもりだ。』

イカツイおじさんは、食後の熱いお茶をゆっくりと飲みながらAを見る。

(イカツイおじさん)
『その狐とかいう外道を俺は知らなかった。
●●子とあの子にした非道を俺は今も許せねぇ。
とはいえ、相手はヤクザ。ただじゃあ済まない。
お前はまだ若い。気持ちは嬉しいが死に急ぐな。
お前はまだ若い。これからだ。』

Aは、イカツイおじさんが大好きだ。
ただ、今回はそんな話は耳に入らない。
Aは、世の中のムカつく奴を排除し、死を感じながら生きる人間だ。
そんなAにとって大事な事は、未来よりも、『今』なのだ。

そんなAの顔を見ていたおじさんは、Aに念を押す。

(おじさん)
『聞いてるのか?お前はこれ以上関わるな。
明日、狐に俺が会いに行く。お前はすっこんでろ!』

おじさんの威圧感は凄まじい。
Aもおじさんには逆らう気持ちはない。

(A)『わかった。』
(おじさん)『よし。それでいい。』

後日、Aは狐が行きつけだという『喫茶店』と、狐が店にくる時間帯を伝えた。

イカツイおじさんが、午後2時頃、例の喫茶店に入店し、席につく。
静かに、ただ、確かな殺気と狂気を研ぎ澄ましていく。
おじさんは狐をその場で殺す気だ。

10分くらいたったころ、別のお客が入店してくる。

おじさんは、驚く。
目の前に『●●子と●●子の娘』が立っている。

●●子は、Aから喫茶店に午後2時頃来るように言われていた。
そして、Aからおじさんに『この手紙』を渡すよう頼まれていた。

(手紙の内容)

【おじさん、●●子さんと娘さんは、新しい小学校で楽しく生活をしているようだ。安全で楽しい日々を過ごすためにも、おじさんが傍にいてあげたほうがいい。それと、娘さんは、住んでいるアパートに来る野良猫を気に入っている。
次の住まいは俺が準備した。そこで猫も飼えるように大家に話を通しているから、娘さんに猫の話もしてあげてくれ。
今まで、タダで、あんたのスキルを頂いた。
これが、俺にできる唯一の恩返しだよ。
あと、昨日久しぶりにおじさんに会って思ったんだけど、体が臭いよ。
女性二人に嫌われないように、清潔感は気にかけてくれ。それじゃあ。】

手紙の最後に、●●子と娘、そしてイカツイおじさんの為のマンションの住所が示していた。手紙の裏には、マンションのキーが張り付いていた。

イカツイおじさんの目から、ポロリポロリと涙が流れる。
そのおじさんを見て、●●子も涙を流している。
泣き虫な大人二人の涙は、とても暖かく、そしてとても綺麗な光を出している。
そんな泣き虫な大人二人の間で抱きしめられた少女の顔には温かい笑みが生まれる。

(前日の夜)
おじさんと●●子と娘が再会をする前日の夜、
Aは地元の『実家アパート』の前に立っていた。

Aが、実家に入るのをためらっている頃、Aの父親が帰って来た。
Aの父親は、Aを見て、驚きもせずに普通に話しかけて来た。

(父親)
『久しぶりだな。いい顔になったな。
お前も立派な社会人か。そうかそうか。』

父親はAの姿を見てからとても嬉しかったのか、続けて話し出す。

(父親)
『今日な、父さんの職場でいい魚をもらったんだ。
この時期で、この大きさ、絶品だぞ!俺が捌くから、一緒に飲もう。』

Aは、初めて父親と飲んだ。
特に長くは話をしなかったが、ただ、久しぶりに父親と親子の時間を過ごした。
『カツン、カツン』と、アパートの階段を上がってくるヒールの音がする。

Aは『ヒールの音』で、まだ小さかった小学生の頃を昔を思い出す。

『カツン、カツン』と鳴り響くヒールの音で、大好きなお母さんが帰って来るのを感じていた小学生時代。

Aの顔が複雑に、しかし小学生時代の幼かったあの頃の『嬉しさ』も込み上げる。

『ただいまーー』

母親が帰って来た。
Aは、目を合わせない。
母親は、そんなAを見て、

(母親)
『若い頃の父さんそっくりだね。いやいや、男前になったね!』

Aは、母親が憎くてしょうがなかった。
ただ、それでもAは母親を嫌いにはなれなかったのだ。

しばらくして、Aは、一つの通帳を出してきた。
Aは、父親に『もう一度、橋村商店をやり直しなよ』と伝えて、
通帳を渡す。
父親は、通帳の中の金額を見て驚く。

(父親)『こんな大金、どうしたんだお前。』

Aは、不動産屋として『一発当てた』と嘘をつく。
本当は、Aが日々努力を積み重ね、つかみ取って来た大事なお金だ。

父親は、Aが嘘をついているのがわかった。
Aの通帳から、『血と汗』の生臭さを感じたからだ。

(A)
『もう一度、橋村商店を再開して、父さんも母さんも、昔みたいに楽しくやってくれ。もうこんなアパート住まいじゃなく、家も買えばいいよ。』

そして、Aは数年ぶりの母親と目を合わせて話をした。

(A)
『母さんもそれでいいよね。
もうあのスーパーを辞めて、ゆっくり父さんを支えてあげてくれ。』

母親は、嬉しそうにうなづいた。

(A)
『あと、兄さんは元気にしているの?
兄さんも色々思うことがあるかもしれない。
俺はいいから、新しい家は兄さんの部屋もちゃんと準備していてくれよ。
いつでも家族皆で住めるように。頼んだよ。』

父親は、これがAと会う最後の時だと理解した。
それと同時に、父親からAに小さな声で本音が聞こえる。

(父親)
『お前、、死ぬなよ。絶対に死ぬなよ。
家族みんなってことは、お前も一緒ってことだからな。』

父親の目は涙でいっぱいだ。
Aがくれた通帳を、大事に強く握りしめ、
Aの目をまっすぐにみつめた。

Aの涙腺が緩む。
Aは、涙を見せたくなく、実家をあとにした。
(A)『じゃあ、元気で。

Aは、街に帰る道中、今までと同じであるはずの地元の風景が、
まるで天国の入り口にいるかのような眩い光景に見えた。

そして、、
宝町に戻り、●●子に手紙を渡し、
午後2時頃、
おじさんと●●子と娘が再会を果たしたその時に、
狐がいる事務所の前にいた。

狐のいる事務所の中には、大勢のヤクザがいる。

Aの死は近い。

続く。
続き⇨『とある不動産や~赤い涙の15話』

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