とある不動産や(番外編弐)

父親が、妻の連帯保証人になった金額は『5,000万円』だった。
なのに、銀行は父親に『1億』を請求してきた。

(銀行員:竹下)
お兄さんが失踪しました。
借金もとても膨れ上がっていて、もう上限いっぱいの1億円を超えました。
法に基づいて、私達はこの土地と建物を売却するしかありません。
ただ、橋村さんが1億円をすぐに返せるなら別ですが、、

(父親)
ふざけるな!まずは兄に連絡をする!
それに1億円なんて聞いていないぞ!あんた、言ってることがめちゃくちゃだぞ!』

父親は、兄や兄の知り合い、商売相手など、くまなく連絡をした。
しかし、妻の兄は見つからなかった。

極度のストレスで、今朝仕入れたばかりの魚よりも臭い異臭が父親の体から汗として出ていた。

(父親)
『とにかく、話がおかしい。今日は帰ってくれ。』

(銀行員:竹下)
『分かりました。次回は、法的手続きを完了させて、この土地建物を売却する為の準備でお伺いさせて頂きます。』

父親は、竹下を睨み、スーツの胸元ををえぐるように掴みかかった。

(父親)
でたらめばっかり言いやがって!俺は5,000万の保証人になったんだ。

(銀行員:竹下)
本気で言ってます?では、分かりやすくご説明しましょう。

つまり、こういうカラクリだ。

たしかに、竹下の説明では『5,000万円』の借金の保証人とする内容だった。
そして、その際に、妻の兄が受け取った金額も5,000万円だ。
そこまでは普通の借金だ。
しかし、土地建物に登記した金額は『1億円』だった。

通常の借金は、『抵当権(ていとうけん)』という登記手続きを土地建物に対して行う。
しかし、今回の登記は『根抵当権(ねていとうけん)』であった。

抵当権は、その場で借金をする際の為の『登記手続き』だが、
根抵当権は、その設定した金額の範囲であれば、自由にお金を借りたりする事が可能だ。
つまり、妻の兄は、5,000万円を借りたあとに、また違う日に追加で5,000万円を借りていたということだ。

補足だが、なぜこんなお金を借りる仕組みがあるのかと言うと、
普通の借金は1回借りて、借りたお金を返すのが普通だろう。

しかし、自営業者や会社経営者は、毎月の仕入れや、毎月必要な資金が違ってくる。
そのたびに、銀行からお金を借りる審査や手続きをするのは時間もかかるし、
何より面倒だ。銀行も同じく何度もその度に審査し、手続きをするのは面倒だ。
よって、ある金額を設定すれば、審査もなく、そして細かい手続きをしないで、お金を借りる事が出来る制度を証明する登記方法が『根抵当権』となる。

父親が無知な事を知っていた銀行員の竹下に、
してやられた』という訳だ。

父親は、唖然とし、ただぼーっとしている。
母親は黙って下を向いている。

まだ明るい時間帯だというのに、父親はお酒に手を出した。
まるで死んでもいい、と言わんばかりの勢いで酒を飲む。

母親は、自分の兄がまさかそんなことになるとは思ってもいなかったようで、
自分の責任だと思い、ただただ震えている。

後日、Aが砂場で静かに立っていると、二人の銀行員がAの前を横切った。

そして、数週間後、『橋村商店』は取り壊された。
橋村商店がなくなった後の1年後、
竹下の言っていた『大型スーパーの駐車場の一部』として、利用された。

竹下は、大型スーパーの建設計画地が、『橋村商店の隣地』であり、
橋村商店も邪魔となるため、合法的な立ち退きを遂行したのだ。

竹下は、街に初めての大型スーパーを誘致し、大型スーパー建設費用の全てを、竹下がいる●●銀行が引き受けた。
融資金額も過去最高の記録として、●●銀行より絶賛された。
そして、破竹の勢いで出世をし、銀行の役員まで上り詰める。

竹下には、大事な一人息子がいる。
『タケル』だ。
数年後、Aと竹下はクリスマスの日に出会うこととなる。

1億までめいいっぱい借りて、借りたまま逃走した妻の兄は、
外国へと逃げていた。
銀行の竹下とグルになり、今回の竹下の計画にのった。
兄は竹下にアイデア料金として3,000万円を渡していた。

Aの父親と母親が一生懸命に働いてきた場所の土地建物、
そして、一生懸命な夫婦が汗水流して子供達の為に貯めていた預金。
その全てを、妻の兄と竹下が持って行った。

妻は、毎日酒ばかりを飲む父親の態度に飽き飽きし、
1年もしないうちに、その大型スーパーで恋人を作る。
お金と女にだらしない彼氏と長く付き合うことになる。

ゆっくりと確実に橋村家は崩れていった。

その時、、
『A君っ!!』  タケルの声がした。

続き⇨『特別編~とある不動産や~タケル君編』

👉『とある不動産や』(物語全話)

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