『なぜだ。何が起きた。』
イカツイお兄さんは現実が受け入れられない。
ストーカー男と蛇を殺したかった。
人生を捨て、復讐者としての覚悟を決め、地元ヤクザの力を借りてまで二人の凶悪犯罪者を追い込んだ。
しかし、
『もう一度、●●子と娘と三人でやり直せるなら』
と、昔の三人で楽しかった思い出にすがり、二人を警察に突き出した。
(ベテラン刑事)
『この間の犯人は二人。しかも数日前には逮捕されていたよ。
この二人は犯人ではない。もうこれで事件は終わりだよ。』
(イカツイお兄さん)
『何を言っているんだ。この二人が犯人だ。』
(ベテラン刑事)
『現場の指紋や血痕、全てこの間きた二人と一致したよ。
被害者の●●子さんは、ひどいトラウマでまだ口が聞けなかったけど、
まあ、状況証拠もそろったことだし、犯人は別の二人で確定したよ。』
地元のヤクザの親分が詰め寄る。
(親分)
『あんた、ベテラン刑事の●●さんだね。
金で雇われることで有名なクソ刑事だな。あんたが仕組んだんだな。』
蛇は、自分の配下にいるヤクザの子分二人を犯人として差し出していた。
ベテラン刑事には多額の資金を毎月渡し、刑事に女性の世話までしている。
全て、蛇とベテラン刑事に仕組まれたことだった。
イカツイお兄さんは、心の中でつぶやいた。
『所詮、この世は腐っているというのが現実か。』
イカツイお兄さんは空を見上げ、
●●子と娘と三人で出かけた楽しい思い出をふりかえる。
とても楽しそうな三人。
幸せそうな三人。
いつまでも、いつまでも笑っている三人。
地元ヤクザや親分が呆れて腰を下ろし、ベテラン刑事が警察署内に戻ろうとし、
蛇とストーカー男が、
空を見上げているイカツイお兄さんの顔を見て、ヘラヘラとあざ笑っている。
まばたきを1回、2回とゆっくりした瞬間、
イカツイお兄さんは、蛇とストーカー男の首をへし折り殺害した。
地元のヤクザに親分、署内に入ろうとしていた刑事、
誰もが言葉を失った。
人が一歩、歩くくらいの時間間隔の中の一瞬の出来事だった。
イカツイお兄さんはその後、刑務所に2年程服役した。
イカツイお兄さんの逮捕後すぐに親分がベテラン刑事を脅し、
正当防衛の可能性も視野に入れた事件としてまとまった。
イカツイお兄さんは、●●子や娘に、刑務所にいる事、
服役後にヤクザや裏の家業としての地上げ屋として存在していることを
隠すようお願いした。
ただ、『あんたらを苦しめた犯人は死んだ』とだけ、親分は、●●子に伝えた。
続く。
続き⇨『とある不動産や~12話』