新型コロナの影響で資金繰りに窮した企業を支援するため、政府系金融機関が危機モードに転換しています。
《関連記事》
⇒新型コロナ対策第1弾
⇒新型コロナ対策第2弾
日本政策金融公庫は民間との協調融資をいったん棚上げし、機動力の高い単独融資にシフト。
商工組合中央金庫はかつての不正の温床となった「危機対応融資」を復活させます。
直近1カ月の売上高が前年同期などと比べ、5%以上減った企業に運転資金と設備資金を無担保で貸し出します。
融資後3年間の金利を年0.9%下げ、中小企業は0.21%、個人事業主などは0.46%で借りられるようになります。
さらにフリーランスなど個人事業主は条件を満たせば政府の利子補給で実質無金利で融資を受けられます。
その窓口となるのは日本政策金融公庫や沖縄振興開発金融公庫です。
日本政策金融公庫の幹部は「政府から強力な支援策を用意し、とにかく早期に貸し出しを実行するよう用意要請を受けている」と明かしています。
政府の信用力を背景に低利で資金調達できる日本公庫は、地方銀行や信用公庫を上回る好条件を取引先に示すことが少なくありませんでした。
金利競争を誘発しているとの批判から民間金融機関との協調融資に舵を切り、18年度に協調融資を実行した件数は前の年度から約3割増しの3万件余りに上っていました。
しかし、今回の有事のさなか、協調融資だけでは調整に時間がかかりすぎるため資金を必要とする企業の求めに即応することは難しく、日本公庫の幹部は銀行界を行脚し、協調融資をいったん棚上げすることに了解を求めています。
日本公庫は審査にあたる要因を増やしたり、支店の営業時間を延ばしたりするなど体制の整備も進めています。
政府の支援策には、商工中金と日本政策投資銀行による危機対応業務も盛り込まれています。
詳細は固まっていませんが、商工中金では2008年のリーマン・ショックや2011年の東日本大震災のときのように、低金利の資金を長期に貸し出す措置が想定されます。
商工中金では2017年に危機対応融資を巡って書類を改ざんするなどの組織的な不正が発覚しました。
商工中金の不正は、有事の施策が平時にも残り、危機が去ると過大なノルマとして組織に残ったことが背景となりました。
危機を脱した後に政策金融を縮小させていく「出口」の視点も持つなど、今回の危機対応では過去の教訓をどこまで生かせるかも問われています。
関連記事
⇒コロナショック~不景気に突入
⇒コロナチャンス
⇒新型コロナによる経済変化