よく耳にする代表的な相続税対策と言えば、
①生命保険をかける
②アパートやマンションを購入・建築し、借金をする
の2点です。
①の生命保険をかける 対策について、
500万円上限×相続人
→相続財産に含まれず、かつ指定した受取人が確実に受け取れる保険金です。
たとえば、妻と子どもが3人いたとしたら、相続人が4名なので、2000万円まで非課税で受取人である相続人の手元に保険金が入ります。
相続人間の相続争い対策や納税資金のための対策として活用されている代表的な相続税対策です。
こちらは、無借金(現金)で行うのであれば、大変良い相続税対策の一つです。
②アパートやマンションを購入・建築し、借金をする 対策について、
借金をする主債務者(名義人)が数年以内に他界し、かつ、健全な黒字事業であれば、という条件付きで良い相続税対策です。
たとえば、
父が2年以内に亡くなることを根拠があり自覚している。
銀行がマンション建設にお金を貸してくれた。
父が亡くなった後そのマンションを相続し、相続後20年経った今でも黒字の健全なマンション経営が出来ている。
というような状況です。
こちらのポイントは、つまり、
借金をし、他界し、相続し、相続した事業も健全でなければならない、
という事です。
少しハードルが高く感じませんか?
実際の実務では、
借金が多かったため、相続税減額の対策は出来ていたけど、引き継いだ不動産事業は赤字スレスレでいつも不安がある、
という声が多いです。
これは、相続税減額の対策に的を絞りすぎていて、健全な不動産事業という観点が抜けているからです。
ですので、借金をして相続対策をされる方はよくご注意ください。
それでは、
そもそも相続税対策の方法は?
私の見解になりますが、相続税対策は大きく分けて2点です。
①被相続人(本人)の財産を減らす
②被相続人(本人)の財産を逃がす
どういうことか、例を挙げて説明していきます。
被相続人Aさんは、妻と子供3人の所帯持ちです。
Aさんは現金1億円と自宅(土地の価値3000万円)と空家(土地の価値1000万円)所有しています。(自宅・空き家の建物価値はないとする。)
現時点では資産合計は、
現金1億円+自宅3000万円+空家1000万円=1億4000万円です。
自宅は、被相続人Aさんと同居している方が相続した場合は、小規模宅地等の特例が適用され、土地評価額を最大8割減額してくれます。(土地の価格の減額のみ、建物は適用されない)
※詳しくは国税局のホームページをご参照ください
よって、
現金1億円+自宅600万円(8割減額)+空家1000万円=1億1600万円
ここからがポイント!
その現金のうち、5000万円を使い空家を壊し、木造8世帯のアパートを新築しました。
すると、Aさんの財産は、
1億円-5000万円(建築費用)+自宅600万円+新築木造アパート(価値3500万円)+アパートの底地(500万円)=9600万円
となります。
※底地とは、所有する土地に建物の所有や利用を目的とする借地権や地上権が設定されていること
現時点で、1億1600万円の財産が9600万円まで減りましたね。(差額2000万円)
これが
①被相続人(本人)の財産を減らす、ということです。
ただ、無借金でアパートを作り、入居者からお家賃を頂くとお金が増えますね。
そこで、次は
②財産(アパートの賃料)を逃がす のです!
例えば、
木造新築アパート8世帯の家賃が1世帯5万円として、家賃収入が
5万円×8世帯=40万円/月(年間満室で480万円の賃料)
子ども3人に110万円の非課税枠(国税ホームページ参照)で毎年生前贈与すると、(贈与の度に贈与契約書を交わしましょう)
480万円(年間満室賃料)—330万円(非課税枠贈与3人分)=150万円
150万円の利益のうちは、修繕費用や固定資産税の支払い、管理費に清掃費などの支出分に充てられることになるでしょう。
つまり、
財産を逃がすことは、贈与の活用
とも言えます。
他にも、法人(不動産管理会社など)を設立し、
Aさん ⇔ 相続人が代表・役員の法人 ⇔ 入居者
という形で賃貸経営も可能です。(サブリース契約)
法人設立や贈与の活用は、メリットデメリットがあります。
特殊ですので、詳しくは不動産に詳しい会計士・税理士を頼られてください。
また、被相続人が生前にお金と時間をかけて準備するべきことがあります。
1.不動産を所有されている方は土地の境界確定(確定測量図)
2.建物の診断書(住宅診断士や建築士へ依頼)
3.将来多額にかかるであろう大規模修繕費や設備投資
4.遺言書の作成(公正証書が理想)
5.被相続人が関係している不動産管理会社との関係を事前に引継ぎをする。
これらを準備しておくと、相続人が不動産や資産を売却するときや、相続税の申告書を作成依頼する際にとても役に立ちます。
関連記事➤遺言書の新保管制度
まだまだ無借金での対策事例はあります。
メリットデメリットはありますが、
お孫さんや、財産を残したい人がいたら【養子縁組】をする対策です。
養子も子の一人となるので、財産から引いて計算してくれる基礎控除額が600万円増えます。
また、
現金が足りない、という方で土地を持ってらっしゃる方は土地を売却し、現金化し、その現金で何か無借金の手法をする
など・・・
参考記事➤現金を作る方法
何より相続全般における対策で大事なポイントは、重大な決定をする前に
1.専門家(会計士・税理士等)にじっくり相談すること
2.専門家の意見と本人の意向を踏まえ、遺言書をきちんと残すこと
3.自分と家族にとってベストな対策を家族と話し合い選択すること
です。
以上、相続税対策のご参考にして頂けましたら幸いです。