とある不動産や(物語④)

鞄には2,000万円しか入っていないのに、おじさんはこの状況をどうするのか。

Aは、とても緊張してきた。
同時に、なぜかワクワクする気持ちも生まれる。

もしかして、
1万円札でお札っぽい紙切れを挟んで1千万円分を増やして見せるのか。
Aは、おじさんの行動に目が離せない。

おじさんが話し出す。
『今回の取引で、1つトラブルの要因が残っています。
その要因さえなくなればお約束の金額を支払えます。』
(ヤクザ)『トラブルって何だ?』
(おじさん)『境界のトラブルです。あなた様の所有している土地がどこからどこまでかを測量させてください。測量後に間違いなければお金をお支払いさせて頂きます。』
(ヤクザ)
『なんだ、めんどくさいなお前。
そんなの金を払ってから勝手にすればいいだろ。』
(おじさん)
『いえいえ、3000万も支払った後に、また別のヤクザ屋さんの土地名義でも出てきたり、ここからここはまだわしの土地じゃー!っていちゃもん付けられたら大変ですから。』
(ヤクザ)
『疑り深い奴だな。分かった。それじゃ勝手に測量して図面を持って来い。』
(おじさん)
『ありがとうございます。』
(おじさん)
『それでは早速、測量許可の書類に印鑑を頂いてもよろしいですか?』
(ヤクザ)
『誰の印鑑が必要なんだ?』
(おじさん)
『もちろん、所有者の方になります。測量後に法務局で測量図面の申請まで必要ですので、その申請が終わり次第に土地の売買契約としましょう。これで私どもも開発業者も安心ですし、あなた様もお代が入り、皆笑顔で取引が完結出来ます。』

ヤクザは、おじさんの言うとおりに書面に印鑑を押すことになった。
また、なぜかヤクザの自分を騙すはずがないと思いこんでいるのか、
もう取引はほとんど成立しているかのうように安心している。

ヤクザが、おじさんが出した『測量依頼・許可』の書類に目を通して、
印鑑を押した。

ヤクザはおじさんと話をしながら、淡々と1枚、2枚3枚と書面に印鑑を押す。

書類に捺印をさせた後におじさんは無言で車に乗り込む。

Aが、
『おじさん、あの入れ込んだ書類は何?』と聞く。

おじさんは、
『魔法の紙だよ』と答える。

数十分ほど車を走らせると、何やら古びたビルに入っていく。

『しげさん、しげさん、』
おじさんが呼びかけると、ひげの長いおじいちゃんが出てきた。
仙人のようなひげに、しわくちゃのおじいちゃんだ。

『しげさん、今回もよろしく頼むよ。』
おじさんは、先程ヤクザから取得した書類を3枚手渡す。

(しげさん)『飛ばし売買か。久しぶりにヤクザをはめるんだな』

しげさんは、書類を持ってスーッとビルの奥に帰っていく。

(A)『おじさん、あれは誰?何をしてもらうの?』
(おじさん)『まあ、来週くらいにはわかるよ。』

次の週に、ヤクザしか所有していないと思っていた道に接している土地の一部が、おじさん名義になっていた。

土地の測量で、道の接している一部をおじさん名義に変更したのだ。
土地の境界をいじり、測量図ではもう一つの土地の図面を作り出す詐欺的技法だ。
先程会った『しげさん』は、司法書士と土地家屋調査士の両免許を持っている
スペシャリストだ。
しげさんは、訳あって表の正しい商売では仕事をしていない。
おじさんのような腹黒い地上げ屋の依頼ばかりを請け負う。

詐欺的技法にヤクザが気づくころには、もう遅い。
道に接している土地は、ヤクザ一筆、おじさんが一筆となり、
開発業者はおじさんから土地を買えば開発工事に着手できる状態になった。

ヤクザは表立って訴訟を起こせない。
元々が悪どい手法で土地を取得しているからだ。
おじさんははじめからヤクザと正攻法で交渉する気はなかったのだ。

1週間後、おじさんはヤクザの事務所に向かった。
もうヤクザは気づいている。
凄い形相でおじさんを睨みつけ、刃物をおじさんに向ける。

『やってくれたな。覚悟はできているんだろうな』

おじさんは声を大にし、話をする。
覚悟は充分あって取引を進めている。
こうやって再び堂々と出向いたのは、お互いに理がある商談だからだ。
話を聞いた方がビジネスとして価値があるが、どうする?

ヤクザは、金が欲しい。
『なめた話なら覚悟しろよ。話してみろ』

おじさんは話を続ける。
『今回、あなたには1,000万円の金額を手付として渡します。
その後、土地を私の名義に変更します。
ヤクザ名義の土地では、【暴対法違反】となる為、
企業や業者は、通常の売買行為は禁止されている。
変更した後に再度、開発業者に交渉し、プラス2,000万円出させる。
合計3,000万円はあなたの物です。
しかし、私の土地についての報酬が無ければ私は面白くない。
よって、私はあなたから1,000万円をコンサル代金として頂きたい。
今のご時世、ヤクザが取引相手と分かったら、業者は手を引きますよ。
そうなったらあなた方も面白くないでしょう。
業者が手を引いて、0円とするのか、私の案に乗り、2,000万円を手にするのか。これが私の精一杯の取引内容です。
いかがいたしますか?』

ヤクザは、呆れた顔をし、
『いい度胸だな。確かに、その方が0よりはマシだな。』

おじさんは、ヤクザを説得できた。
そして、開発業者には、あと2,000万円を支払えば、取引は完結でき、
新たに道を5,000万円で作るより1,000万円も得をする、と説得する。

おじさんは、仮に業者との取引が上手くいかなくても、
手元に残り1,000万円がある。
ヤクザへの残代金は、
3,000万-(コンサル代金1,000万+手付金1,000万)の1,000万。
問題なくヤクザに筋を通せる。
また、土地名義は全ておじさん名義になっているため、
どうせ、ゆくゆくは新たな開発業者が土地を欲しがる。

おじさんは、1円も出さずに、高度な地上げ交渉を成し遂げた。

後日、業者はプラス2,000万を支払った。

新たに道を作らずに済んだ業者は1,000万の得をし、
ヤクザは40万しか価値のない土地が2,000万で売れ、
おじさんは、ヤクザと業者のダブル報酬で合計2,000万を手に入れた。

あざやかな測量技法と売買技法、
何よりもおじさんの堂々たる交渉術にAは虜になる。

こんな腹黒い世界で生きる術を得ようと下積みをしている時に、
ある時、Aの前に黒髪の綺麗な大人の女性が現れる。

そして、その女性が原因で、Aの人生は再び狂い始める。

続き⇨『とある不動産や~5話』

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