不動産売買 失敗話(信頼を失いかけた話)

今回は、信頼を失いかけた、不動産取引についてお話します。

私はあるお客様から、RC造(マンション)で投資利回りが9%以上のいい物件が出たらぜひ買いたいとご要望を受けていました。

ご要望を受けてから1年ほど経った頃、お客様のご要望に叶うであろうRC造の売物件を任されることになりました。

その物件は、RC造(マンション)で50世帯(1Kタイプ)、築24年、満室利回り10.5%。
しかも、別に屋上に広告看板が設置されており、広告収入が毎月10万円入ってきます。

これはお客様に喜んで頂けるだろうと、早速お客様にこちらの物件を紹介し、お客様は予想通り大変喜んでくださり、是非購入したい、とおっしゃいました。

早速売買契約に向けて、既存の管理会社とも綿密な打ち合わせを行い、伝えてもらうべき重要な事項が抜けていないかも再三確認して、売買成立後の管理運営についても細かく打ち合わせを行いました。

売買契約の準備も万端に整えて、売買契約当日も和やかな雰囲気で、お客様には再三ありがとうとおっしゃっていただき、私もとても嬉しかったです。

契約から1か月後には無事決済も終え、終始問題なく取引を完了させることが出来ました。

それから、数か月後のことでした。

こちらの物件のお客様(大家さん)から、

「退去者が出るたびに、原状回復費用が予想以上にかかる。これだと当初の計算と合わない。どうしたらいいのか!」

との連絡が。

一体、どういうことだ!?

私はすぐさま、管理会社の上層部にお会いしに行きました。
細かく話を煮詰めていく中で、管理運営する上で、重要なことを知らされていないことが2つあることが分かりました。

まず、1つ目は、

こちらの物件は、全50世帯あり、全て普通の賃貸と聞いていたのですが、実は、50世帯のうち20世帯(約4割)の物件が、家具家電が備え付けで貸している物件でした。
つまり、約4割の20世帯は、家具家電のオプションを付けて入居付けしていたのです。

この家具家電オプション付きの部屋の入居者が退去し、かつ家具家電の交換が必須になった場合の原状回復費用は、約20万~25万円程にもなってしまいます。

通常の賃貸の場合は、1Kタイプくらいだと、入居者が部屋を汚しすぎず普通の使い方をして4年間住んで退去となった場合の原状回復費用は、4万円くらいになります。
(水回り・ウォシュレット・インターフォン・エアコンなど備品交換は含まず。)

このお部屋は月5万円程のお家賃です。

通常の賃貸の場合であれば、原状回復費用は1カ月分の費用負担で収まるところが、家具家電付のお部屋を原状回復しようとしたら、約5カ月分の費用負担が必要となる計算です。
しかも、お部屋を募集して入居されるまで、約2カ月(内1カ月はフリーレント)かかる物件でした。

5万円×7カ月+広告料(5万円)=40万円 ・・・約8カ月分。

つまり、家具家電付のお部屋に退去者が出た場合、約8カ月もお部屋が空いているのと同じになる、という計算になるのです!

そして、2つ目

実は、
この物件の前の大家は、こちらの物件をいわゆるお小遣い物件として、管理会社や他の仲介業者に宣伝していた
というのです。

お小遣い物件とは、大家さんが自分の物件のお部屋の賃貸契約を決めてくれた場合、不動産業者に支払う仲介手数料や広告料とは別に、賃貸営業マン個人へお礼金として支払われる物件、のことです。
(お小遣い物件の制度は、会社によっては禁止されているところもあります。)

こちらの売買物件の元の大家さんは、不動産営業経験者の大ベテランで、信頼していたこともあり、私の詰めも甘くなっていたのだと思います。
まさか、管理運営を開始すればすぐに分かることを、私に正直に話さなかったなんて。
私は、大変ショックを受けました。

大家さんには、本来なら売買契約成立前に知っておくべきこの浮かび上がった2つの事実を、正直にお話ししました。

まず、1つ目の事実。

家具家電付きのお部屋20世帯についての運営は、確かに数年に1度、家賃8カ月分という多めの出費がありますが、この物件は学生ニーズと通常の単身世帯にも人気のエリアのため、入居者への付加価値としては良いですし、また通常の家賃より3000円~4000円高く貸し出せており、大家さんに真摯にご説明をし、1つ目の事実についてはご納得いただくことが出来ました。

問題は、2つ目。

こちらの物件を、地域の不動産営業マンがお小遣い物件として認識していた物件だ、という事です。

新しい大家になって、お小遣い物件が支払われない物件だと認識され、こちらの物件を紹介するのは二の次にしよう、と思われてしまいます。

悲しい話ですが、現実問題として不動産業界にはあり得るお話です。

このことを大家さんに伝えると、
大家さんは不安になっておられました。
当然だと思います。

元の大家さんと管理会社さんが、事前に正直に話してくれていれば。
もっと言えば、私がもっともっと疑いを持って細かく確認していれば・・・。

その日の夜は、久しぶりに深酒をしたのを覚えています。

一人で行きつけの居酒屋で飲んでいる最中に、私はかなり苛立っていた様子だったのだと思います。
そんな様子を見ていた居酒屋の大将が、こう言ってくれました。

「お前は真正面から受け止めて逃げない奴だから、今日も戦ってきたんだな。たまには深酒する日もあるよ。ゆっくりしていきなよ。」

大将の優しい言葉が心に沁みて、また自分の詰めの甘さで大事なお客様を不安にさせてしまっていることの悔しさが入り交じり、涙がこぼれてしまいました。

お酒もたくさん飲み、涙も流したし、あとは現実を受け入れて問題解決に向けて全力で取り組むのみ!

次の日、私は対策を考えました。

信用している不動産業者やベテランの大家のお客様へも相談しました。
結果、これをすれば大丈夫!という案は見つかりませんでした・・・。

ですが、わかったことが2つありました。

一つ目は、賃貸営業マンに何かしらお得感を感じてもらえるようにしなければいけないという現実と、
二つ目は、賃貸営業マンにただお願いします、というだけでは解決しないという現実
です。

そこで、次のことを大家さんに提案してみました。

【管理会社だけの集客でお部屋が決まるようにすること】

そのためには、 大家と管理会社の賃貸営業マンとの人間関係を構築する、 このことに取り組む必要があると思ったのです。

大家さんは、成功するかどうか不安要素もある私の提案でしたが、チェレンジしてみたい、と言ってくださいました。

早速まずは、私も含め、大家さんと手出しで3カ月に1度くらいのペースで管理会社の社員と飲み会を開き、その会には必ず賃貸営業の方を同席して頂きました。
そこで、大家さんの人柄を知ってもらい、また現場で働いてくださっている営業や管理の方をいたわります。
女性でお酒が飲めない方もいらっしゃたので、そのときはランチ会に切り替え、女性社員が行ってみたい少し敷居の高いお店にご招待しました。
また、1~2カ月に1回はお菓子(社員さんが好みそうなスイーツなど)を持参してご挨拶に伺い、感謝の気持ちをお伝えしました。

そして大家さんから、
「せっかくご縁があった皆様に物件のすべてを託したい。他社ではなく皆さんに入居付けを全てして頂きたいです。」
と賃貸営業マンに意向をはっきりお伝えしてもらいました。

驚いたことに、1年も経たず、物件の状況は安定ゾーンへ入りました。

若く経験も浅い賃貸営業の社員さんが、1番多く入居付けしてくれたことが、とても印象的でした。
その社員さんには、自分が必要とされ期待され、感謝されていることが嬉しい、とまでおっしゃっていただけました。
その社員さんと大家さんは、今ではマブダチの仲です。

あれから5年程経ちますが、今でもその管理会社さんと大家さんとの関係は、良好です。

大家さんを不安にさせてしまったときはどうなることかと思いましたが、なんとか問題解決となり、ホッとしています。
私も、様々な経験をさせて頂き、日々感謝の気持ちでいっぱいです。

それにしても、不動産業界は自分の利益優先で誠意がない人も中にはいるので、みなさんもお気を付けくださいね。

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